平成25年度税制改正大綱閣議決定

名古屋税理士政治連盟 会長 和田 義弘

【平成25年度税制改正大綱 閣議決定】
 平成25年度税制改正大綱が1月24日の党税制調査会総会でまとまり、続く臨時総務会で了承されました。政権与党に復帰した自民党が4年ぶりに手がけた大綱は、安倍内閣が最優先課題とする経済再生と、来年4月に第一段階の税率引き上げが予定される消費税増税に向けた対策を重視した内容で、企業の設備投資を促進するための新たな税制の創設や住宅ローン減税を大幅に拡充するなど、企業の成長を後押しする一方、家計の負担に十分配慮した措置が盛り込まれています。政府はこれを踏まえて、29日にも来年度予算案を決定する方針です。

【平成25年度税制改正の基本的考え方】
 わが国の経済は、円高・デフレ不況が長引き、足下では、貿易赤字の拡大、国内の成長機会や若年雇用の縮小、復興の遅延等、閉塞感は深刻さを増している。
 こうした危機に立ち向かい、これを突破するためには、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」によって、これまでのいわば「縮小均衡の分配政策」から、「成長と富の創出の好循環」へと転換させ「強い経済」を取り戻すことに全力で取り組まなければならない。
 この断固たる決意のもとに、平成25年度税制改正においては、従来型の発想にとらわれず、民間投資や雇用を喚起し持続的成長を可能とする成長戦略に基づく、政策税制措置をこれまでになく大胆に講ずる。また、「地方・地域の元気なくして国の元気はない」という考え方のもと、自らの発想で特色を持った地方・地域づくりができるよう、地方分権を推進し、その基盤となる地方税の充実に努める。さらに、平成26年4月から17年ぶりに消費税率が引き上げられることに対応する措置を講ずる。
 また、東日本大震災からの復興を目に見える形で大きく前進させるべく税制面からも強力に支援することとする。
 一方で、税制は、現下の経済・社会情勢に機動的に対応するだけではなく、少子・高齢化が進展する中で、社会保障の安定財源を確保するとともに、経済の成長力の強化、格差の是正といった中長期的課題にも応えていかなければならない。そのような観点から、我々は平成21年度税制改正法附則等において抜本的税制改革の具体的方向を示したところであり、この方針に沿って、昨年、当時の民主党政権が提案してきた税制改正について、我々が主導していわゆる三党協議を行い、必要な修正を加えた上で、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(税制抜本改革法)を成立させたところである。法律に従い、平成25年度税制改正においては、所得税及び資産課税について所要の措置を講ずることとしているが、今後とも、平成21年度税制改正法附則、税制抜本改革法、さらに三党合意を尊重し、税制の中長期的課題に取り組んでいく。

【平成25年度税制改正の具体的な内容】
(個人所得課税)
  • (1) 所得税の最高税率の見直し・・・現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の税率を創設。
  • (2) 金融・証券税制 ・・・10年間、500万円の非課税投資を可能とする日本版ISA(非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置)の創設及び金融所得課税の一体化の拡充(公社債等の利子及び譲渡損失並びに上場株式等に係る所得等の金融商品間の損益通算範囲の拡大等)。
  • (3) 住宅税制・・・住宅ローン減税を平成26年1月1日から平成29年末まで4年間延長し、その期間のうち平成26年4月1日から平成29年末までに認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅)を取得した場合の最大控除額を500万円に、それ以外の住宅を取得した場合には400万円にそれぞれ拡充。 自己資金で認定住宅を取得した場合及び省エネ等の一定の住宅リフォームを行った場合の所得税の住宅投資減税について拡充。 個人住民税における住宅ローン控除について、平成26年4月1日から平成29年末までの間、控除限度額を拡充(減収額は全額国費で補てん)。
  • (4) 復興支援のための税制上の措置・・・高台移転を更に推進するため、一定の要件を満たす防災集団移転促進事業で行われる土地の買取りに係る譲渡所得に対し、5,000万円の特別控除の創設。 東日本大震災の被災者が新たに再建住宅を取得等する場合、住宅ローン減税の最大控除額を他の地域よりさらに抜本的にかさ上げし、600万円に引上げ(現行360万円)。
(資産課税)
  • (1) 相続税・贈与税の見直し・・・相続税の基礎控除について、現行の「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」を「3,000万円+600万円×法定相続人数」に引下げ。相続税の最高税率を55%に引き上げる等、税率構造の見直し。小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、居住用宅地の適用対象面積の上限を330 (現行240 )に拡大するとともに、居住用宅地と事業用宅地(貸付事業除く)の完全併用を可能とする等の拡充 。贈与税の税率構造について、最高税率を相続税の最高税率に合わせる一方で、子や孫等が受贈者となる場合の贈与税の税率構造を緩和する見直し。相続時精算課税制度について、贈与者の年齢要件を65歳以上から60歳以上に引下げ、受贈者に孫を加える拡充措置。
  • (2) 事業承継税制・・・非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度(「事業承継税制」)について、適用要件の緩和(雇用確保要件の緩和等)、負担の軽減(利子税の引下げ等)、手続きの簡素化(事前確認の廃止等)など、制度の使い勝手を高める抜本的な見直し。
  • (3) 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置・・・子や孫に対する教育資金の一括贈与に係る贈与税について、子・孫ごとに1,500万円までを非課税とする措置を創設。
  • (4) 復興支援のための税制上の措置・・・東日本大震災に係る津波により甚大な被害を受けた区域のうち、市町村長が指定する区域における土地及び家屋に係る固定資産税等の課税免除等を1年延長。
(法人課税)
  • (1) 民間投資の喚起と雇用・所得の拡大・・・国内の生産等設備投資額を一定以上増加させた場合にその生産等設備を構成する機械装置の取得価額の30%の特別償却又は3%の税額控除ができる制度を創設。環境関連投資促進税制について、その適用期限を2年延長するとともに、即時償却の対象資産にコージェネレーション設備を追加。研究開発税制の総額型の控除上限額を法人税額の20%から30%に引き上げるとともに、特別試験研究費の範囲に一定の共同研究等を追加。労働分配(給与等支給)を一定以上増加させた場合、その増加額の10%の税額控除を可能とする所得拡大促進税制を創設するとともに、雇用促進税制を拡充し税額控除額を増加雇用者数一人当たり20万円から40万円に引上げ。
  • (2) 中小企業対策・農林水産業対策・・・商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等が経営改善に向けた設備投資を行う場合に30%の特別償却又は7%の税額控除ができる制度を創設。中小法人の交際費課税の特例を拡充(中小法人の支出交際費800万円まで全額損金算入)。
  • (3) 復興支援のための税制上の措置・・・避難解除区域等における避難対象雇用者等を雇用する場合の税額控除制度、及び設備投資を行う場合の即時償却や税額控除ができる制度について、新たに避難解除区域等に進出する法人に同様の措置の適用。

(消費課税)
  • (1) 衝突被害軽減ブレーキを搭載した先進安全自動車に係る自動車重量税及び自動車取得税の特例措置の対象に5トン以上の一定のバスを追加納税環境整備。

(国際課税)
  • (1) 租税特別措置等・・・適用期限の延長、拡充。

(納税環境整備)
  • (1) 延滞税等の見直し・・・延滞税・利子税・還付加算金について、現在の低金利の状況に合わせ引下げ。

(関税)
  • (1) 輸入貨物の課税標準となるべき価格に係る規定・・・明確化を図り所要の措置を講ずる。

(検討事項)
  • (1) 小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業者、同族会社、給与所得者の課税のバランス等について、幅広い観点から検討する。
  • (2) 医療に係る税制のあり方については、消費税率が10%に引き上げられることが予定される中、医療機関の仕入れ税額の負担及び患者等の負担に十分に配慮し、関係者の負担の公平性、透明性を確保しつつ適切な措置を講ずることができるよう、医療保険制度における手当のあり方の検討等と併せて、医療関係者、保険者等の意見も踏まえ、総合的に検討し、結論を得る。
  • (3) 税理士制度については、税理士の業務や資格取得のあり方などに関し、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、税理士の資質の一層の向上など国民・納税者の税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から、関係者等の意見も考慮しながら、税理士法の改正を視野に入れて、その見直しに向けて引き続き検討を進める。