名税政の概要詳細
Ⅰ.名古屋税理士政治連盟の概要
➀税政連の存在理由
 税理士会は、税理士法に基づく特別法人で、税理士の使命及び職責に鑑み、税理士の義務の遵守と税理士業務の改善進歩に資するため、会員に対する指導・連絡及び監督に関する事務を行なうことを目的としています。
 税理士が置かれている環境は日増しに厳しくなっており、税理士制度が社会制度としてその機能を十分に発揮し、その確立・発展を期すためには制度自体の改善進歩を図ることが必要であり、制度の改善は必然的に法改正という手続きを行うことになり、業界を取り巻く他の諸制度との利害得失上、立法に関しては関係者間の調整が必要となります。
 このため、税理士会は税理士法に定められた建議権に基づいて、行政、立法府に趣旨説明、陳情を行います。しかし、いくら陳情を行っても当事者が税理士業界の目的と現状を十分理解しない限り、業界の要望が実現されることは困難といわざるをえません。
 近時、税理士業界を取り巻く諸問題も、政治の場で解決されることが多くなっています。税理士会は、法に基づく特別法人なるが故に、政党及び国会議員等に対する政治活動は制限されており、平素から議員との接触ができない面があります。
 そこで、政治活動をより現実的・効果的に機能する組織が必要となり、ここに税理士政治連盟(税政連)の目的があり、存在理由があります。税政連は、税理士会員がその資格において税政連会員となり、税理士に共通する問題に限って、政治的に解決しようとする政治団体であります。
②税理士と税政連
 税政連の設立目的は、税理士会の目的・事業を実現するためのものであり、強制加入でなくとも、税理士会の会員として等しく権利・義務を有する立場から、当然自動加入と考えるべきです。もちろん、個人の思想・信条は自由であり、いささかも個人の自由を制約するものではありません。
 業界を取り巻く環境は厳しく、今後ますます難問題の出現が予想され、それに対処するには、業界一丸の対応が必要であり、税理士会員の税政連に対する関心と協力が肝要であります。
③税政連の性格
 税理士会の意思決定は、税理士の将来を決定するといっても過言でないだけに、会員間の対立する意見も吸収しながら手順や手続きを踏み、慎重に行われます。
 税政連は、こうして決定された税理士会の意思の実現を目的とするので、目的団体としての性格が強いといえます。つまり、税理士会が民主的手続きを重視する秩序的目的団体であるのに対して、税政連は実践を重視する団体であります。したがって、税政連は、決定された税理士会の意思実現のために、政治の場で迅速でタイムリーな行動が必要とされることが多く、弾力的な実践を要求される組織であります。
④税政連と後援会
 税政連の活動は、税理士会の方針を踏まえて、政党や国会議員等に働きかけ、これを効果あらしめるために、国政レベルの選挙において推薦候補者を決定し、その選挙の支援活動を行うことも重要な施策であります。
 「税理士による国会議員等後援会」(以下、「後援会」という)は、他の職業団体に例を見ない独特のもので、これは国会議員と常日頃から接触し、国会の情勢や生の政治の動き等の情報を得ると同時に、われわれの意思・要望を十分伝えて理解を得、法改正の時に備えておくための場であり、また議員の正しい政治活動を支援するための組織であることから、税政連の組織活動と後援会の緒活動があいまって日常活動をたえまなく推進する最重要組織であります。
Ⅱ.税政連活動の成果と課題
1.税制改正
①平成22年度税制改正大綱
  • 法人税法第35条(特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度)の廃止
  • 交際費等の損金不算入制度の見直し
     資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(中小法人)に係る定額控除限度額が400万円から600万円に引き上げられた。
②平成23年度税制改正大綱
  • 納税者権利憲章の策定、税務調査の事前通知、更正の請求期間の延長、給与所得控除額の上限設定、相続税の連帯納付義務制度の見直し、中小法人の軽減税率15%に引き下げ等の要望項目が盛り込まれた。
③平成24年度税制改正大綱
  • 前年度に盛り込まれた項目の内、更正の請求期間を5年に延長、給与所得控除額の上限設定、中小法人の軽減税率15%に引き下げ、相続税の連帯納付義務制度の改正等が実現した。
  • 法人の実効税率引き下げに伴い、代替財源の確保の手段の一つとして導入された欠損金の繰越控除額の制限については、中小法人は適用除外とされた。
④平成25年度税制改正大綱
  • 交際費等の損金不算入制度の見直し
     中小法人に係る定額控除限度額が年800万円に引き上げられるとともに、定額控除限度額までの金額の10%損金不算入措置が廃止された。
  • 事業承継税制の見直し
     非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度、いわゆる事業承継税制について、経営承継相続人等の要件緩和、納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件の緩和、利子税の負担軽減や猶予税額の再計算の特例の創設等の負担軽減、事前確認制度の廃止、手続きの簡素化等の見直しが行われた。
⑤平成26年度税制改正大綱
  • 復興特別所得税の還付手続きの見直し
     復興特別法人税の1年前倒し廃止により、煩雑であった復興特別所得税の還付については法人税申告書により還付できるようになった。
⑥平成27年度税制改正大綱
  • 外形標準課税制度は中小法人には導入しないこと
  • 欠損金の繰越控除限度額は一律に縮減しないこと(中小法人には適用しない)
  • 消費税の単一税率を維持することについては、軽減税率導入に向けた表現が引き続き盛り込れたため、要望実現はきびしくなった。税率引き上げ時期は当初平成27年10月1日とされていたが平成29年4月1日まで延期された。
⑦平成28年度税制改正大綱
  • 引き続き緊急重点要望事項とした外形標準課税制度及び欠損金の繰越控除額制限については要望通り中小法人には適用されなかった。
     消費税の単一税率を維持することについては、平成29年4月1日に税率10%とすると同時に酒類と外食を除く飲食料品及び一定の新聞の定期購読料について軽減税(8%維持)の導入が明記され、要望が実現しなかった。なお、税率引き上げ時期は再度延期され、平成31年10月1日とされた。
⑧平成29年度税制改正大綱
  • 災害減免法等の規定に加え、従来災害ごとに特別立法で手当てしてきた対応を常設化し、災害対応の税制基盤を整備
  • 中小法人税制について、資本金基準を維持するとともに、課税所得(過去3年間平均)が15億円以下であることを加え、中小法人の実態への配慮
  • 取引相場のない株式等の評価の適正化に向けた見直し
  • 配偶者控除等の人的所得控除の簡素・合理化に向けた見直し
  • 事業承継税制の小規模事業者に配慮した雇用確保要件等の見直し
⑨平成30年度税制改正大綱
  • 事業承継税制の緩和
     事業承継税制について、これまでの措置に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置が創設された。

以上、各年度の税政連活動の成果である。

2.税理士法改正
①平成13年改正
  • 租税に関する訴訟における補佐人制度の創設
  • 税理士試験科目の免除規定の見直し
  • 税理士法人制度の創設
  • 税理士会会則に研修に関する規定と紛議調停に関する規定を追加し、報酬に関する規定を削除
  • 財務大臣による役員の解任規定の廃止
  • 許可公認会計士制度の廃止
②平成26年改正
  • 租税教育への取組みの推進
  • 調査の事前通知の規定の整備
  • 報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定等の見直し
  • 税理士試験の受験資格要件の緩和
  • 補助税理士制度の見直し
  • 公認会計士に係る資格付与の見直し
  • 税理士に係る懲戒処分の適正化
  • 懲戒免職等となった公務員等に係る税理士への登録拒否事由等の見直し
  • 事務所設置の適正化
  • 税理士証票の定期的交換
  • 電子申告等に係る税理士業務の明確化
  • 会費滞納者に対する処分の明確化
 法改正には盛り込まれなかったが、研修の義務化及び税務支援の義務化等が税理士会の会則で規定されることとなり、税理士の更なる資質の向上が求められる。

 これからの課題としては、平成26年3月20日参議院本会議で可決成立した改正税理士法の法令に即した運用を注視しつつ、税理士制度が納税者にとってなくてはならない制度であり続けるための検討を継続する。

名税政における過去の活動実績